『いづれにしても存在はしません』その3

欠損していくオリジナルについて


世界ではどのような例があるのかを考えてみます。

私の中でまず初めにあがるのがドイツのドレスデンにある聖母教会です。
歌舞伎座などと同じく第二次大戦(1945)で聖母教会は倒壊しました。
そして2005年に再建されました。


1945年に倒壊した教会の石材は当時から保管され、2005年の復元時には真新しい石材と共に空襲で焼けた黒い石材は教会の壁面にしっかりとモザイク状にはまっています。


キーポイントは1945〜2005年の完成までの60年間は現地に完成型の聖母教会は無かったという事。(ただし、一部遺構は残っていたようです。)





組みかわってしまった石材を指してその教会は以前の物ではない。という印象を受けるでしょうか?



あまりそういった印象は受けません。


何故か?



以前の遺構と石材を利用しているからか?
バロック建築の堂々とした佇まいがそう思わせるのか?
宗教的なモニュメントだという事がそう思わせるのか?
60年間再建しようとしてきた人間の感情のダイナミズムがそう思わせるのか?



『本物』か『本物でないか』はそんな主観的な判断では答えが出そうにはありあません。



終戦後日本でも再建されたものはたくさんあります。
明治神宮や各地の天守閣などが再建されました。
天守閣は当時の建築基準法の影響でしょうか、コンクリートで建てられました。(天守に関しては再建というより復興天守でしょうか。)ちなみに名古屋城は最近になり木造で再建しようという動きもあります。




ではここでもう一つパラドックスを提示してみます。
『砂山のパラドックス』です。



砂山から一粒づつ砂粒を取り去っていく、1粒目を取り去ってもおそらく砂山は砂山のままですが、最後に残った一粒も砂山といえるか?といったパラドックスです。



これは、定義の曖昧な言葉(砂山がそれにあたる)に由来するパラドックスです。
つまり、建造物や美術品における『本物』という言葉が何をさしているかを明確にしない限り答えはでませんよ!っといった感じに置き換えられます



ここでさらに見方を一つ増やしてみます。
『聖母教会』や『明治神宮』はあくまで信仰の対象としてあります。
神様がいるのか、いないか、あそこにいるのは本物の神様か?と言った問題は、認識の対象ではなく信仰の対象です。つまり信じるかどうかです。その教会は以前あった教会と同じものかどうかは、あくまで信仰心の問題なのかもしれません。



そのものが『本物』かどうか同一かどうかという問題自体が
『コミットメントの一貫性』を強要するような、近代の抱えたジレンマのようにも感じられてきました。(今問題がすり替わりました。)



以前、近隣のお寺や神社をフィールドワークしていた事がありました。
スケッチをし、古そうな鐘楼や山門の年代などを住職や神主さんに尋ねるとほとんどの場合、寺や神社の創建された年代を教えてくれます。私が聞いていたのは、目の前にある山門の建立された年代だったのですが、それを聞き返すと大抵の場合分からないと言った答えが返ってきます。


当時は気づきませんでしたが、ここにある『ズレ』のようなものが、まさに『本物』かどうかの物差しがずれている事を指していたように思えます。
住職が言われていた創建年代は、まさに『ゲニウスロキ』のような土地に根ざした、正当性のようなものだったでしょう。私は目の前にある。山門の『アウラ』はいつから発せられていたものか?を問うていたつもりでした。



近、現代って病んでるね!めでたし めでたし



‥て感じでは終わりません。 



今のはあくまで『本物』の見方を少し変えただけです。



上記した話と物体としてのアイデンティティを考えた上で、
以下の方法で検証してみてはどうでしょうか?



①どんなに加筆や修理をしても法隆寺や非母観音が造られたり、描かれたりした意義は変わらない。例えそれらを構成する要素が変わったとしても法隆寺が建立された目的や
非母観音が描かれた動機には影響しない。よってそれは同じものだ。



②どんなに、修復や修理をしても前提となる設計者が描いたマッスや構図が変わらなければ同じものといえる。



難しい所です。


やはり、本物であるという証明は主観的な判断でしか証明できないようなものでしょうか。
すくいそびれた要素がたくさんあり、やっぱりうまく解決できません。
そもそも同質なものに宿るアイデンティティは同じものだという前提さえ怪しくなってきます。



どなたか詳しい方教えてください。



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by shino-miya | 2010-06-11 20:15 | 建築物


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